島国時々更新日記

日本ではない南の島国で知ったことを書いていきます

【ドイツ】技術の革新による変化と働く人たち、雇用

デジタル化、自動化などの技術の革新により、日本企業のみならず世界中の企業がビジネスや仕事のやり方の大変革を迫られていると言われている今日この頃。例えば電通の「日本における企業のデジタルトランスフォーメーション調査(2019年度)」によると、デジタルトランスフォーメーションにすでに着手している企業は70%だそうで、この先訪れる変化から逃れられないと各企業は戦々恐々としている様子がうかがえます。

技術の革新とは働く人たちにとっては自分たちの業務の効率化であって、そうすると思い出されるのが19世紀初頭にイギリスで発生した「ラッダイト運動」なのですが、現代の働く人たちは「効率化したら仕事が奪われる」と機械をぶち壊すわけにもいきませんので、どうにかこうにか生き延びていくしかありません。

 

かかる問題に対してドイツにおいては、連邦労働大臣のH. Heil氏(SPD)が昨年2019年から具体的な対応策を求めて動き始め、6月に政労使三者で「国家継続訓練戦略」を採択しました。詳細は下記に譲ります。

 

この流れの中で連邦労働省は「明日の労働法(Arbeit-von-morgen-Gesetz)」を提案しました。この法律案は3月4日(水)に閣議決定されたので、これから国会で審議が進むことでしょう。法案の概説はこのようになっています。

https://www.bmas.de/DE/Service/Gesetze/arbeit-von-morgen-gesetz.html 

Mit dem Gesetz sollen die Förderinstrumente der Arbeitsmarktpolitik weiterentwickelt werden, um die Menschen in Deutschland rechtzeitig auf die Arbeit von morgen vorbereiten zu können. Angesichts der Erkenntnis, dass in lebensbegleitendem Lernen und Weiterbildung der Schlüssel zum Erhalt der Beschäftigungsfähigkeit im Strukturwandel liegt, sollen besonders die Möglichkeiten von Weiterbildung und Qualifizierung in besonderen Situationen weiter gestärkt werden.

(この法律によって、ドイツ国内の人々が適時に明日の労働に備えられるように、労働市場政策の促進手段はさらに発展されるべきものである。この理解、すなわち構造変化におけるエンプロイアビリティの保持のカギは生涯に渡る学習と継続訓練にあるということに鑑みると、特に、特別な状況下での継続訓練と資格取得のさらなる強化がなされるべきものである。)

 

 

すなわち、ドイツお得意の職業訓練制度を用いて、学習や教育訓練により技術革新があっても引き続き何らかの形で仕事を得られるようにしていくという方向性です。具体的なスキームは、これまたドイツお得意の操業短縮(いわゆるワークシェアリング)&その補助金を活用して従業員の教育訓練のための時間とお金を作るとのこと。

 

コロナウイルス感染拡大でドイツ国内はかなり混乱しているので、この法案審議は後回しにされてしまうと思います。しかしproblem-mindedな日本人にとってはsolution-mindedなドイツ人が技術革新と雇用の問題にどのようにタックルするのかは興味深いため、今後の状況を見守りたいと思います。