島国時々更新日記

日本ではない南の島国で知ったことを書いていきます

【フィリピン】賃金制度や賃金決定の仕組み?

1.フィリピンの賃金制度が分かる資料はある?

日本では賃金制度についての書籍や雑誌、論文が数多く発行され、厚労省をはじめとする行政の統計も充実しておりますが、フィリピンにはこんなにいろいろ賃金関係の資料はないよ!

フィリピン企業は他社の賃金の事例とか気にならないのでしょうか…?それとも賃金の仕組みが超単純で、「最低日給+何かしらの手当て(何年勤めても昇級なし)」みたいな程度だから他企業の事例は気にする必要がないということなのでしょうか…?

pinoyintern.hatenablog.com

このブログによると、こういうことのようですし。

先日マニラで実習生の両親と食事をしたのだが、彼の父親はマニラの港でフォークリフトを運転する仕事を20年続けている。しかし、給料は最低賃金(月30,000円)のまま昇給がないという。 

海外の会社は基本的にこういう使い方をする。つまり長く働いても人が育つと考えていないから20年間昇給しないのである!

 

とりあえずこれからぼちぼち、目についたフィリピンの賃金関連の情報をまとめていきたいと思います。

 

2.フィリピン政府おすすめ賃金制度!Two-Tiered Wage Systemとは?

アキノⅢ政権下の2012年、フィリピンの最低賃金制度を司る「賃金合理化法(共和国法第6727号)」に基づき、最低賃金制度を改正して導入された賃金制度です(法改正ではなく全国賃金生産性委員会のガイドライン発出により導入)。ベースとなる最低賃金(Tier1)に生産性賃金(Tier 2)を上乗せした二つの部分からなる賃金制度を、企業内の労使委員会により話し合って自主的に導入することが推薦(≠義務)されています。

この制度の日本語訳が見つかりませんでしたので、この記事では「二段賃金制度」と仮に訳すことにします。

nwpc.dole.gov.ph

 

二段賃金制度とは?

二段階賃金制度は、共和国法第6727号(賃金合理化法)により創設された義務的最低賃金制度を改革するものであり、第1段階目(Tier 1)の賃金は最低賃金、第2段階目(Tier 2)は任意の生産性賃金制度である。この制度は2010年に概念化され、2012年に労使パートナーの賛成により実現した。

その効果は?

義務的最低賃金(Tier 1)
義務的最低賃金額を決定するに際しては、RTWPB(Regional Tripartite Wages and Productivity Board(地域三者生産性委員会))は以下の公式なデータを参照する。
1.貧困線(NSCB(National Statistical Coordination Board))
2.一般的な平均賃金額(労働力調査
3.消費者物価指数、インフレ率、雇用、地域GDPなどの社会経済的な指標

 

任意的生産性賃金(Tier 2)
任意的生産性賃金は生産性委員会やこれに類似の集団のような労使関係を通じて導入されるべきものである。
生産性委員会に労働者側の代表を入れることで、成果を評価する項目、基準、対象、そして特に利益分配の制度について公正で合理的な設定を確保する。

生産性賃金に対する助言

RTWPBは、生産性向上と利益分配方法において労働者と企業が参考にできるように、生産性賃金に対して助言を公表する。
RTWPBは、助言の対象とする優先的または成長中の産業を、そのサプライチェーンも含めて明らかにする。産業の労使は助言の策定と公表過程に参加する。参加には、要求運動や助言の実施も含まれる。委員会の助言は、様々な地域産業三者委員会において、当該産業の自主的な規則とともにグッドプラクティス任意規定の一部を形成するものである。

TTWS(Two-tiered Wage System)は労働者のより良い保護のための真正な最低額もしくは最低賃金を設定する。TTWSは、最低賃金は貧困線より若干高い額であり、労働者やその家族が最低限度の必要性を満たせるようなものであるが、同時に使用者側の支払い能力を考慮して、平均的な賃金額を上回るべきものではない。

生産性賃金の存在は労働者と使用者の双方に利益がある。その理由は、労働者の生活水準の向上を手助けしつつも、労働者と企業の競争力と生産性の向上を促すからである。

生産性賃金は任意で柔軟性があり交渉可能なものである。RTWPBは多くの生産性向上および促進制度に対して生産性賃金助言を公表する。助言には、産業の効率性や見通し、労働市場の状況、その他関連する指標を含み、企業の生産性促進プログラムの設計に際して参考になるものとする。

 

 

すなわち、制度の大枠が国レベル(全国賃金生産性委員会)で示され、もう少し具体的なことが各地域レベル(地域三者生産性委員会)で示され、あとは各企業に導入するか否かもふくめてお任せ、ということです。

より詳細は話は後日。