島国時々更新日記

日本ではない南の島国で知ったことを書いていきます

【ドイツ】職場での新型コロナ感染予防対策

新型コロナ感染者の発生場所に占める職場の割合

東京都の資料(4月28日モニタリング会議)では、感染者の感染経路のうち14.8%が職場での感染とのこと。

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最も多い感染経路の「同居」ほどではありませんが、職場での感染も防止する必要がありますので、昨年ですが厚生労働省は職場における「取組の5つのポイント」を公表し、労使団体への要請等を通じて周知しています。

 

<5つのポイント>

①テレワーク、時差通勤

②体調がすぐれない場合は休む

③職場を密にしない、マスク着用

④「感染リスクが高まる『5つの場面』」

⑤手洗い等の衛生対策

 

5つのポイントは厚労省がお勧めしているだけであり、法律に基づく要請や決まりではありません。 なお、5つのポイントを具体的な指示にブレイクダウンしたチェックリストを、安全衛生委員会や衛生委員会で活用することも示されています。

そこで職場での感染を防ぐために、ドイツではどのような対策が採られているのか、みていきます。

 

ドイツ:法令を制定(新型コロナ労働安全規則)

ドイツでは、いわゆる労働安全衛生法Arbeitsschutzgesetzes (ArbSchG))に基づき「新型コロナ労働安全規則(SARS-CoV-2-Arbeitsschutzverordnung(Corona-ArbSchV))が制定されています。2021年1月に制定され施行されており、現在までに3回改正されています。

制定や改正の経緯やその都度の内容はこちら。

www.bmas.de

規則はこちら。

www.gesetze-im-internet.de

 

新型コロナ労働安全規則の概要

第1条 目的および適用範囲

この規則の目的は、業務遂行における新型コロナ感染のリスクを最小限にすることおよび従業員の安全と健康を確保することです。

第2条 職場における接触を減少させる措置

まず使用者には「新型コロナ労働安全基準(SARS-CoV-2-Arbeitsschutzregel)」を考慮した措置を講じることを求めています。また人と人との接触を減らすために、特に休憩中も含めて複数人で同一空間を共有することを避けること、やむなく複数人で同一空間を共有する場合には10平米につき一人という人数制限をし、スペースの都合などで不可能であれば換気・衝立・マスクなどで従業員を保護することを求めています。

第3条 職場における衛生計画

前条と同じく、新型コロナ労働安全衛生基準を考慮した措置を講じることを求めています。

第4条 口および鼻の保護

マスク着用という意味です。もし第2条のとおりに接触を減らせない場合、もしくは1.5メートルの退陣距離を保てないとか建物内にある就業場所への行き来が必要である場合には、使用者は従業員に医療用マスクを提供する必要があります。従業員も提供されたマスクを着用する義務があります。

第5条 新型コロナ検査

職場における感染のリスクを最小限にするため、在宅勤務ができず出社が必要な従業員に対して、使用者は最低週2回の新型コロナ検査を提供しなければなりません。なお従業員に検査を受け入れる義務はありません。

第6条 効力の発生と失効

この規則の効力は最長で6月30日までです。

 

在宅勤務は?-感染症予防法に規定

在宅勤務(Home-Office)の利用については、当初は新型コロナ労働安全規制に定められていましたが、現在は感染症予防法( Infektionsschutz-Gesetz (IfSG))の第28b条(7)に移動しました。

ここでは、使用者が従業員の業務が在宅で遂行可能であれば在宅勤務を申し出なければならないこと、従業員も在宅勤務ができない理由がない限りこれを受け入れなければならないことが定められています。

(※最長で6月30日まで。)

在宅勤務に関しては、当初は「在宅勤務権」を恒久的に法定化しようという声がありましたが、新型コロナの場合に限定したものとなっています。

www.jil.go.jp

まとめ

日独で、職場および通勤での新型コロナ感染予防のために行政が求めている内容は、ほぼ同じのようです(主に密を避ける、消毒、マスク、在宅勤務)。

ですが、法令とするか純粋な呼びかけとするかで、実効性に差が生じる可能性があること、またドイツでは全国的に現在は検査が拡充されている一環で職場でも検査が重視されていることが、指摘できるでしょう。