島国時々更新日記

日本ではない南の島国で知ったことを書いていきます

【ドイツ】自社だけではなく取引先にも人権重視要求へ:サプライチェーン法案(1)

ミャンマーでの国軍によるクーデターや中国の新疆ウイグル自治区での人権侵害が日本でも大きく報道され注目が集まるとともに、政府のみならず民間企業も人権侵害する側に「間接的」にでも加担しないよう求める動きにも注目が集まっています。

www.jiji.com 

hmgroup.com

 各企業が自主的に新疆ウイグル自治区において生産過程で人権侵害が生じている原材料の利用を取りやめた例ですが、人権という普遍的なものが侵害されながら生産された原材料や中間製品、完成品を購入販売することで企業が利益を得るというケースへの対応は、企業の自主性に任せておくべき課題なのでしょうか?

 

日本:「ビジネスと人権」に関する行動計画を策定 

昨年(2020年)10月16日、外務省などが集まる関係府省庁連絡会議において、企業活動における人権尊重の促進を図るため、「ビジネスと人権」に関する行動計画が策定されました。

www.mofa.go.jp

そもそもの発端は、2011年にに国連人権理事会で承認された「ビジネスと人権に関する指導原則」において、「人権を保護する国家の義務」、「人権を尊重する企業の責任」、「救済へのアクセス」の3つの柱が定められたことです。今までは人権の尊重は国家の責任と考えられていましたが、この指導原則では企業にも責任があるとしたのが新しいところ。また指導原則では、国家に「ビジネスと人権に関する国別行動計画(National Action Plan on Business and Human Rights:NAP)」の策定も推奨しており、今回日本は指導原則承認の9年後にNAPを策定したのでした。

日本のNAPも、「人権を尊重する企業の責任を促すための政府による取組」は「国内外のサプライチェーンにおける取組及び『指導原則』に基づく人権デュー・ディリジェンスの促進」と「中小企業における『ビジネスと人権』への取組に対する支援」だとしています。なお、NAPでは「人権デュー・ディリジェンス」は

人権への影響を特定し、予防し、軽減し、そしてどのように対処するかについて説明するために、人権への悪影響の評価、調査結果への対処、対応の追跡調査 、対 処方法に関する情報発信を実施すること

と説明されています。そして、日本の企業が守るべき「人権」も列挙されていますが、企業側は「では、具体的にどうしたら『人権を守る良い企業』になれるのか?どう行動するべきなのか?」と困ってしまいますよね。

ということで、NAPの内容に沿った経済活動を企業が行えるよう、企業のとるべき行動を定めた法律「サプライチェーン法案」をすでに作成し、現在国会で法案審議中のドイツについてみていきます。

(続く)