島国時々更新日記

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【ドイツ】サプライチェーン・デューディリジェンス法(Lieferkettensorgfaltspflichtengesetz(LkSG))の内容(4)

12月25日のブログ記事に続く内容です。

Lieferkettensorgfaltspflichtengesetz(サプライチェーンデューディリジェンス法)

https://www.bgbl.de/xaver/bgbl/start.xav?startbk=Bundesanzeiger_BGBl&jumpTo=bgbl121s2959.pdf

 

第5条 リスク分析

(1)第4条のリスクマネージメントの枠内で、企業が第5条の(2)から(4)のリスク分析を適切に実施し、企業がリスクを確認することを義務付けています。また、①企業が直接的なサプライヤー関係を濫用的に形成した場合、または②直接的なサプライヤーに対する注意義務の求めを回避するために迂回的な取引を行った場合には、間接的なサプライヤーを直接的なサプライヤーとみなすと定めています。

(2)企業が確認した人権や環境に関するリスクは、適切に、重要性判断と優先順位付けがなされるべきと規定しています。その際には、第3条(2)に列挙されている、対象企業が注意義務を「適切なやり方で」履行しているか判断するための基準をメインになされるべきとしています。

(3)企業はリスク分析の結果について、取締役会または購買部門のような決定権のある人たちに連絡するよう、求めています。

(4)企業はリスク分析を年に一度、そして新製品の製造開始など企業内部やサプライチェーン内部に動きがあった場合にも実施することを求めています。

 

第6条 予防措置

(1)第5条のリスク分析の枠内で、企業が第6条の(2)から(4)の予防措置を適切に講じることを義務付けています。

(2)企業と企業の執行部に「人権に関する戦略についての基本方針(Grundsatzerklärung  über seine Menschenrechtsstrategie)」を策定し公表することを義務付けています。基本方針は少なくとも下記の3点を含んでいること、としているので、3点を直訳します。

1.第4条(1)、第5条(1)、第6条(3)から(5)、第7条から第10条により企業に課されている措置の手続きの説明。

2.企業がリスク分析に基づいて確認する、人権と環境に関するリスクの優先順位。

3.企業がリスク分析に基づいて確認する、人権と環境に関するリスクについて、自社従業員とサプライチェーン内の諸企業に対して期待すること。

(3)企業に自社内でのリスクの予防措置を確立することを義務付けています。予防措置は特に下記の4点を含んでいること、としているので、4点を直訳します。

1.基本方針に定めた人権に関する戦略を、関連する企業活動の範囲で実行すること。

2.適切な調達戦略と購買慣行の考案と実施を通じて、リスクを防止または最小限にすること。

3.関連する企業活動の範囲において、教育を実施すること。

4.リスクを基礎にした管理措置を実施すること。この管理措置により、関連する企業活動の範囲において、基本方針に定めた人権に関する戦略の遵守を検証する。

(4)企業にサプライチェーン内での直接的なサプライヤーによるリスクの予防措置を確立することを義務付けています。予防措置には特に下記の4点を含んでいること、としているので、4点を直訳します。

1.直接的なサプライヤーを選定する際には、人権と環境に関する期待を考慮すること。

2.直接的なサプライヤーが企業の経営陣が要求する人権と環境に関する期待を遵守し、またサプライチェーン全体にこの期待を適切にアナウンスすることができるよう、(サプライヤー)契約により確約すること。

3.上記2については、直接的なサプライヤーが(サプライヤー)契約に含まれる(人権や環境に関するサプライヤーの)義務を遵守できるように、教育や職業再教育を実施すること。

4.直接的なサプライヤーにおいて人権戦略の遵守が検証できるよう、管理措置とリスクを基礎にした実行を適切に契約で規定できるように合意すること。

(5)企業は予防措置の検証を年に一度、そして新製品の製造開始など企業内部やサプライチェーン内部に動きがあった場合にも実施することを求めています。また予防措置は必要に応じて遅滞なくアップデートすることも必要です。

 

人権や環境に関するリスクを発生させないためには、まず「予防措置」が重要になります。そして予防措置の中でも最大のカギになるのは、政府が連邦議会に提出した資料(47ページ)を見ると、立法者はこのように考えているようです。

https://dserver.bundestag.de/btd/19/286/1928649.pdf

 

Der Einkauf hat – als Schnittstelle zwischen dem eigenen Geschäftsbereich und dem des Zulieferers – eine entscheidende Rolle bei der Vermeidung oder Minimierung menschenrechtlicher und umweltbezogener Risiken.

(中略)

Deshalb ist die Entwicklung und Implementierung von Beschaffungsstrategien und
Einkaufspraktiken im Einklang mit der Grundsatzerklärung und der darin enthaltenen Menschenrechtsstrategie von besonderer Bedeutung.

 

(購買は、自社とサプライヤーが交差する点であり、人権と環境に関するリスクを回避または最小限にすることに対する決定的な役割がある。

(中略)

それゆえ、調達戦略と購買慣行の考案と実行を基本方針と調和させたものにするのであり、これらに盛り込まれることになる人権戦略は特別な意味を持つのである。)

 

ということで、今後は、調達契約の内容精査と調達契約締結時のサプライヤーとの話し合いに注目が集まりそうです。

例えばドイツ企業であるダイムラー社ではすでに「社会的責任と人権原則」を策定しており、その中で「ダイムラーでは、生産材料および非生産材料(間接資材)とサービスの調達に、責任を持って取り組んでいます。サプライヤー向けに特化した当社の契約条件と基準では、調達スタッフが検証すべき、サプライヤーに対する明確な要件と要望を規定しています」と述べています。

https://www.daimler.com/dokumente/nachhaltigkeit/gesellschaft/daimler-principles-of-social-responsibility-and-human-rights-jp-20211124.pdf