島国時々更新日記

日本ではない南の島国で知ったことを書いていきます

Q)海外就職した人たちのお給料などの労働条件の概要は分かるか?

A)分かりません、人それぞれです。ただしあまり労働条件はよくない模様。

 

近年「グローバル人材」という、意味があいまいでよく分からない言葉が多用されています。文部科学省審議会用資料では一応「語学力のみならず、相互理解や価値創造力、社会貢献意識など、様々な要素」を身につけている人材とされています。でも、日本人は遣隋使として留学したり唐から高僧を受け入れたりオランダ語医学書を翻訳したり、開国後はお雇い外国人に様々なことを学んだりと、相当昔から文科省が説明している素養は身につけているので、新たに「日本人にはあれやこれが不足している、ダメだ!」という否定的論調を展開しなくてもいいと思うんですけどね。

さて、グローバル人材なるものが育って何をするのかというと、国内では外国人と仕事などでお付き合いし、国外では国際機関や日系企業の海外支社で働いたりということでしょう。「海外就職」なるものが強力にプッシュされているようです。

日本人が「海外で働く」場合には主に、①日本国内の企業と雇用契約を結んで海外支社に派遣される「駐在員」と、②日本国外の企業と雇用契約を結んでその地で働く「現地採用」があります。駐在員の雇用主は日本国内の企業、現地採用になると雇用主はその土地の企業です。

「駐在員」に関しては、「海外駐在員給与・処遇制度および運用実態に関する調査」(2011年、Mercer Japan)や「第7回 海外派遣勤務者の職業と生活に関する調査」(2008年、労働政策研究研修機構)があります。

現地採用」に関しては公式な調査がないようです。ですので冒頭の回答のように「労働条件の概要は不明」という回答になります。

 

<フィリピンの現地採用のだいたいの感じ>

筆者が働くフィリピンに関していえば、実際に統計を取って公式な数字ではないものの、法務省の『平成28年度調査研究(フィリピン)』の57ページ脚注120には

f:id:shimaguniPH:20190422163031p:plain

と書かれています。平成28年度(2016年年度)の調査ですから、2015年ぐらいの数字でしょうね。

また別の人が2018年にした計算では、全職種を平均すると「83,800ペソ=約17万5000円(※1ペソ=約2円)」となっています。これは求人広告の給与欄の最低月給の平均ですので、8万3800ペソスタートでここから次第に昇給ということになります。

あいにく、福利厚生については調べられておらず、会社ごとに求人票の書き方も異なっているのでよく分かりません。しかし筆者の聞く限りでは、会社が家賃全額または大部分を負担してくれる社宅が用意されていることが多いですし、年に一度会社費用で日本に一時帰国させてくれるところも多いようです。

日本の大卒新入社員の初任給平均が20万円と少しなのを考えると、だいぶお給料は安いものの、筆者のように切り詰めて食費その他を2万ペソ以内に収めていれば毎月13万円ほど貯金が可能、ということになるでしょうか?

と、このように考えればけっこうお金は貯まるような気もしますが、フィリピンでもマニラよりお給料の安いセブなら、実際には

しかし、問題はどの業種でも月給が良くて月60,000ペソ(120,000円)程度しかなく、多くは月に50,000ペソ(100,000円)以下が当たり前ということですね。

 (中略)

ただし、セブで仕事をするホトンドの人が1年経たずに今後の生活に不安を持って、セブ生活を諦めてしまいますね。

 

私の経験上で言えば、現地採用されたとしても1年持つ人は10人に1人もいません。

 

同じ職場で3年以上などになると間違い無くそれだけで古株です。

との声もあり(2018年の記事)、日本の国内の企業のように「従業員を長期で定着させる」という方針ではない会社が多いのかもしれません。

 

結論としては、

 〇現地採用組についてはその地域の労働条件の相場は明らかになっていない(だから人材紹介会社によく聞こう!求人サイトで比較しよう!うっかりお給料の安い会社に就職しないように!)、

 〇とはいえお給料は安いのははっきりしている(特にペソのように弱い通貨だと円換算するとガッカリ)、

 〇長期勤続が期待されていない(面接時にその会社の勤続年数の傾向を聞こう!)

ということになるでしょう。自分の長期的なキャリアの一部分に現地採用での海外就職を組み込んでいくという明確な戦略があって海外就職する人以外は、安易に海外就職することは避けるべきではないか、というのが筆者の見解です。

ちなみに営利活動ではありませんが、青年海外協力隊で1~2年日本でのキャリアを中断した人には、下記のような支援が準備されています。ということはおそらく、海外に出ていくということはキャリアの中断につながる可能性もなきにしもあらず(だから再就職支援が必要)という意味なのだと思います。

www.jica.go.jp

海外就職にはまずキャリアの戦略の策定から!

(※あくまで筆者の個人的な考えです。)

 

<2020.3.10追記>

> 東南アジアは物価が安いというのは最早昔のことで、今はそうではないというのが現実だ。

バンコクの例ですが、東南アジア就職でよくある「物価が安いですよ(だからお給料が安くても大丈夫、暮らせます)」という売り文句はあまり当てはまらないかもね、という意味で掲載します。でも人件費は安いのでその分は確実に日本よりも物価は低くなります。