【フィリピン】フィリピン人の考えるフィリピン国内の変わった食べ物
フィリピンを含む東南アジア一帯で「変わった食べ物」といえば一番有名なのは「バロット」でしょう。
ローカル新聞電子版に先日3月17日、"Know some of the exotic dishes in the Philippines" と題した、バロット以外でフィリピン人の考えるフィリピン国内の変わった食べ物が紹介されていましたので、見てみたいと思います。写真があるので記事の閲覧注意。
1.Mole Cricket:ケラ(昆虫)
2.Shipworm:フナクイムシ(貝の一種)
3.Beetle Larvae:カブトムシなどの幼虫
4.Tuslob Buwa:ブタの脳や内臓から作ったソースの名前
5.Abuos:アリの卵
6.Salagubang:カブトムシ的な甲虫の仲間
7.Sea Urchin:ウニ
え...?
ウニ雲丹がフィリピン人には1から6に匹敵するほどの変わった食べ物なの…?
ウニはフィリピンでは中部ビサヤ地方のボホール島の周りに多く生息しているそうです。
写真はボホール島のお隣、オランゴ島のウニ。漁師のおじいさんが「バフンウニだよ!3つ150ペソでどう?」って言うから値切って100ペソで買ってみたらバフンウニじゃなかった。まあバフンウニが熱帯の海にいるわけないし。
ということで特にオチもなし。
【参考】フィリピン労働法の権威ある先生
日本で労働法の権威ある先生といえばまず菅野和夫先生ですが、フィリピンでは、私のいる会社の顧問弁護士によればCesario Azucena先生だということです。
(逆に言うと、Azucena先生の本以外にはちゃんとした労働法の本がなさそうだからAzucena先生の本は権威あるものだとも...。)
2016年版が最新のようです。REX Book Storeの直営店だと学割で買えるはずです。
しかし日給400ペソとかの国でこの本は1800ペソとかなので、フィリピンでは本は高級品です!
【フィリピン】賃金制度や賃金決定の仕組み?
1.フィリピンの賃金制度が分かる資料はある?
日本では賃金制度についての書籍や雑誌、論文が数多く発行され、厚労省をはじめとする行政の統計も充実しておりますが、フィリピンにはこんなにいろいろ賃金関係の資料はないよ!
フィリピン企業は他社の賃金の事例とか気にならないのでしょうか…?それとも賃金の仕組みが超単純で、「最低日給+何かしらの手当て(何年勤めても昇級なし)」みたいな程度だから他企業の事例は気にする必要がないということなのでしょうか…?
このブログによると、こういうことのようですし。
先日マニラで実習生の両親と食事をしたのだが、彼の父親はマニラの港でフォークリフトを運転する仕事を20年続けている。しかし、給料は最低賃金(月30,000円)のまま昇給がないという。
海外の会社は基本的にこういう使い方をする。つまり長く働いても人が育つと考えていないから20年間昇給しないのである!
とりあえずこれからぼちぼち、目についたフィリピンの賃金関連の情報をまとめていきたいと思います。
2.フィリピン政府おすすめ賃金制度!Two-Tiered Wage Systemとは?
アキノⅢ政権下の2012年、フィリピンの最低賃金制度を司る「賃金合理化法(共和国法第6727号)」に基づき、最低賃金制度を改正して導入された賃金制度です(法改正ではなく全国賃金生産性委員会のガイドライン発出により導入)。ベースとなる最低賃金(Tier1)に生産性賃金(Tier 2)を上乗せした二つの部分からなる賃金制度を、企業内の労使委員会により話し合って自主的に導入することが推薦(≠義務)されています。
この制度の日本語訳が見つかりませんでしたので、この記事では「二段賃金制度」と仮に訳すことにします。
二段賃金制度とは?
二段階賃金制度は、共和国法第6727号(賃金合理化法)により創設された義務的最低賃金制度を改革するものであり、第1段階目(Tier 1)の賃金は最低賃金、第2段階目(Tier 2)は任意の生産性賃金制度である。この制度は2010年に概念化され、2012年に労使パートナーの賛成により実現した。
その効果は?
義務的最低賃金(Tier 1)
義務的最低賃金額を決定するに際しては、RTWPB(Regional Tripartite Wages and Productivity Board(地域三者生産性委員会))は以下の公式なデータを参照する。
1.貧困線(NSCB(National Statistical Coordination Board))
2.一般的な平均賃金額(労働力調査)
3.消費者物価指数、インフレ率、雇用、地域GDPなどの社会経済的な指標
任意的生産性賃金(Tier 2)
任意的生産性賃金は生産性委員会やこれに類似の集団のような労使関係を通じて導入されるべきものである。
生産性委員会に労働者側の代表を入れることで、成果を評価する項目、基準、対象、そして特に利益分配の制度について公正で合理的な設定を確保する。生産性賃金に対する助言
RTWPBは、生産性向上と利益分配方法において労働者と企業が参考にできるように、生産性賃金に対して助言を公表する。
RTWPBは、助言の対象とする優先的または成長中の産業を、そのサプライチェーンも含めて明らかにする。産業の労使は助言の策定と公表過程に参加する。参加には、要求運動や助言の実施も含まれる。委員会の助言は、様々な地域産業三者委員会において、当該産業の自主的な規則とともにグッドプラクティス任意規定の一部を形成するものである。TTWS(Two-tiered Wage System)は労働者のより良い保護のための真正な最低額もしくは最低賃金を設定する。TTWSは、最低賃金は貧困線より若干高い額であり、労働者やその家族が最低限度の必要性を満たせるようなものであるが、同時に使用者側の支払い能力を考慮して、平均的な賃金額を上回るべきものではない。
生産性賃金の存在は労働者と使用者の双方に利益がある。その理由は、労働者の生活水準の向上を手助けしつつも、労働者と企業の競争力と生産性の向上を促すからである。
生産性賃金は任意で柔軟性があり交渉可能なものである。RTWPBは多くの生産性向上および促進制度に対して生産性賃金助言を公表する。助言には、産業の効率性や見通し、労働市場の状況、その他関連する指標を含み、企業の生産性促進プログラムの設計に際して参考になるものとする。
すなわち、制度の大枠が国レベル(全国賃金生産性委員会)で示され、もう少し具体的なことが各地域レベル(地域三者生産性委員会)で示され、あとは各企業に導入するか否かもふくめてお任せ、ということです。
より詳細は話は後日。
【フィリピン】平均世帯年収の伸び(2015年から2018年にかけて)
以前の記事で、フィリピンの2015年世帯年収について言及していましたが、フィリピン統計庁が2019年12月に2018年世帯年収の統計を公表していましたので、簡単に整理します。
https://psa.gov.ph/content/annual-family-income-estimated-php-313-thousand-average-2018
首都圏の他、大都市であるセブ市とダバオ市のある地方も抜き書きました。
2015年 | |||
平均年収 | 平均年支出 | 平均年貯蓄 | |
全国平均 | 26万8000ペソ | 21万6000ペソ | 5万2000ペソ |
マニラ首都圏 | 42万5000ペソ | 34万9000ペソ | 7万6000ペソ |
中部ビサヤ地方 | 23万9000ペソ | 19万3000ペソ | 4万6000ペソ |
ダバオ地方 | 24万7000ペソ | 19万ペソ | 5万7000ペソ |
2018年 | |||
平均年収 | 平均年支出 | 平均年貯蓄 | |
全国平均 | 31万3000ペソ | 23万9000ペソ | 7万5000ペソ |
マニラ首都圏 | 46万ペソ | 36万9000ペソ | 9万2000ペソ |
中部ビサヤ地方 | 30万8000ペソ | 20万4000ペソ | 10万4000ペソ |
ダバオ地方 | 26万8000ペソ | 18万9000ペソ | 7万8000ペソ |
「順調に収入が増えていってるね、経済成長しているね」と言えるのでしょうか?インフレ率は、2017年は2.9%、2018年は5.2%でした。日本のインフレ率は、例えばバブル経済真っただ中の1989年でも2.27%でしたので、ここのところのフィリピンのインフレ率はかなりのものです。全国平均年収の26万8000ペソ→31万3000ペソの伸び率は約1.17%ですので、インフレ率の方が高いです。
でもその割にはスマホ持っている人、新車、スタバやおしゃれカフェにたむろっている人の数が目に付くのですが…。筆者の近所のコンドミニアムのワンルームタイプは家賃だけでも2万ペソぐらいが相場のようですが、外国人だけではなく結構若いフィリピン人も見かけます。
格差社会では収入の増加率も一律ではないので、中間層以上の収入の伸びと庶民層の収入の伸びが全然違うということなのでしょうか?
(※家計に関する基礎的な調査が2年おきの実施とは、これで政策がちゃんと策定できるのかしら、と不思議に思います。)
【労働者性】フィリピン乗合バスの運転手は労働者ではなく自営業者扱い
鉄道が発達しておらず自家用車も庶民には高嶺の花のフィリピンでは、庶民の移動手段の代表格は乗合バスのジープニーです。筆者の近所では初乗り8ペソ。
ja.wikipedia.orgこの乗り物の起源は、第2次世界大戦後のアメリカ軍の払い下げジープを改造してフィリピン人が乗り合いできるようにしたもの。マニラは大型のジープニーが走っているようですが、筆者の居住する市は道も狭いので軽トラックの荷台を改造して乗り合いできるようにした小型のものがほとんどです。
ジープニーは行政用語ではPublic Utility Vehicle(PUV)と呼ばれているので、公共交通機関、すなわち市かバス会社が経営しているのかと思ってしまいますが、このような「経営主体」はありません。それぞれのジープニーの車体にはオーナーがいて、運転手はオーナーから車体だけを借りて、毎日一定額の車体の借り賃をオーナーに納めます。さらに運転手は客からの運賃から借り賃やガソリン代を支払い、その残りを自分の収入とします。
この仕組みをboundary Systemといい、車体オーナーと運転手の間の契約はboundary system contractといいます。ということで、運転手は誰かに雇われているのではなく、自営業者。
この契約の内容や実際の運転手の仕事ぶりについてよく分かる新聞記事(2013年10月9日付けマニラタイムズ)がありますので、日本語に訳して紹介します。
バウンダリーシステムでも雇用関係あり
1997年にジープニーのオーナーが一人の運転手と契約し、オーナーが複数所有するジープニーの一つを運転させることとした。この契約はバウンダリー契約であり、運転手は1日当たり450ペソという一定額をオーナーに支払って残りを自己の収入とすることとした。この契約では、運転するルート、服装、車体の使用方法とメンテナンス、乗客サービスガイドラインも含まれていた。その他、当該ジープニー車体を購入する合意もなされていた。購入のために運転手は1万ペソの頭金を支払い、4年の間毎日550ペソの分割金を支払うと約束した。
その後運転手は毎日の分割金550ペソを支払えなくなっていたが、オーナーは運転を続けることを許していた。しかし2000年1月に、オーナーは契約上のペナルティを科すことを決めた。分割金不払いのペナルティとして、オーナーは当該ジープニーを取り返し、運転手に運転を禁じた。
そこで運転手はこれは違法な解雇であるとしてオーナーを訴えた。運転手によれば、オーナーとの契約は雇用契約であり、十分な理由がなく解雇されたというのである。オーナーは雇用関係の存在を否定し、二人の間の関係は賃貸借(leasing)の関係だったと反論した。
全国労働関係委員会はこの訴えを訴えの利益なしとして却下した。しかし高裁は、当事者の間には雇用関係があると認めた。すなわち、雇用関係に基本的に必要になるのは解雇の可能性や支払いの形態ではなく、被用者の仕事のやり方をコントロールする力があることのみである。
最高裁も高裁の判断を支持し、バウンダリーシステムの背後にあるメカニズムを説明した。
すなわち、バウンダリーシステムとは、オーナー/管理者が運送業者として乗客を輸送するための一般的な方法であり、その目的は、第一には運転手の報酬を管理するためのものである。すなわち運転手の日々の稼ぎはバウンダリーの額以下のものはオーナー/管理者に渡され、バウンダリーの額以上のものは運転手の報酬になる。このシステムの下では、オーナー./管理者は運転手をコントロールし監視する。賃貸借契約では、貸し手は貸している動産にはコントロールが及ばず、借り手はその使用の結果に対して責任を負うので、異なっている。バウンダリーシステムでは事業の管理は依然としてオーナー/管理者にある。バウンダリーシステムでは、オーナー/管理者は公共の利便性のためにジープニーを運行するフランチャイズ許可(筆者注:地方自治体からの営業許可)を持っているため、運転手が当局のフランチャイズどおりの路線を運行しているか、事業の管理のための規則に従っているかを監視する義務を負う。運転手が固定給をもらうのではなくバウンダリーの額をオーナー/管理者に渡してその残りだけを収入とするという事実だけでは、雇用契約ではないとするには十分ではない。間違いなく、運転手はオーナー/管理者の通常の事業または商売に通常は不可欠または望ましい行為を行っている。
(以下略)
以上はVillamaria事件の最高裁判決(2006年4月)だそうで、バウンダリー契約はジープニー以外にもバスやタクシーで利用されていますが、これらの運転手も労働者性を争って認められているということです。そうです、フィリピンではタクシー運転手もタクシー会社に雇われているのではないのです。
ということは、裁判する時間とお金があればジープニーやタクシーの運転手も大方労働者性が認められるのか...。
Villamaria事件が起こったのは1997年なのでジープニーのバウンダリーの額は1日450ペソですが、今は1000ペソぐらいではないでしょうか?高いな!
ところで外務省の安全対策基礎データ
庶民の足として親しまれているバスやジープニー,トライシクル等の多くは,運転が乱暴であったり,整備が十分でない,あるいは保険に加入していないなど,その安全水準は日本に比べて非常に低い状況にあります。また,車内で強盗やスリ等の被害に遭う事例も多発していますので,利用はお勧めしません。
と書かれてしまっていますが、安全水準がこうなってしまう大きな原因はバウンダリー制度にあります。なにしろ運賃8ペソでバウンダリーやガソリン代を払った残りしか運転手の収入になりませんので、運転手はお客を乗せるために必死で、ジープニー同士はお客の奪い合い。車両の整備は運転手の責任ですので、そんな余裕はない。
そんなことで、PUV Modernization Programがドゥテルテ氏が大統領就任後の2017年から進められています。
このプログラムは2020年には完了しているはずですが、まだ完了する気配なし。それにあのジープニーがなくなって近代的なバスだらけになったら街の景色が一変してさみしい…。しかし現在のフィリピンでは環境、乗客の安全、交通渋滞、そして運転手の労働条件にまで悪影響だという現実を考えると、このプログラムの完了が待ち望まれます。
フィリピン社会におけるバウンダリー制度の意味についてはこちら。