島国時々更新日記

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【ドイツ】サプライチェーン・デューディリジェンス法(Lieferkettensorgfaltspflichtengesetz(LkSG))の内容(6)

1月3日のブログ記事に続く内容です。

Lieferkettensorgfaltspflichtengesetz(サプライチェーンデューディリジェンス法)

https://www.bgbl.de/xaver/bgbl/start.xav?startbk=Bundesanzeiger_BGBl&jumpTo=bgbl121s2959.pdf

 

第8条 苦情処理手続き

(1)企業に対し、企業内部に苦情処理手続きを確立することを義務付けています。苦情処理手続きでは、苦情を申し立てる人が、企業またはそのサプライチェーン内のサプライヤーが原因で引き起こされた、人権や環境に関するリスクや企業の義務違反を指摘できるものとします。リスクや義務違反を指摘する人(以下、申立人とします)が、それらの存在を証明して、手続きを開始します。企業は手続きを代理人に任せます。代理人は申立人ととともに、提示された事実を検討します。代理人は、企業と申立人が解決を合意するための手続きを提案できます。また、企業は適切な外部の苦情処理手続きを利用することも可能です。

(2)企業は苦情処理手続きのルールを文章化し、公表することとしています。

(3)上記(1)の代理人は、中立的でなければならず、特に重要なのは独立して他者からの指示に拘束されずに職務を遂行することです。また、守秘義務も課されます。

(4)企業は適当な方法で、苦情処理に関する情報開示を義務付けられます。また、苦情を申し立てた人が、身元を明かされないことや申し立てにより不利益を被ったり刑罰を科されたりしないように保護することを、企業に義務付けています。

(5)企業は苦情処理手続きの検証を年に一度、そして新製品の製造開始など企業内部やサプライチェーン内部に動きがあった場合にも実施することを求めています。

 

なお、連邦政府が連邦議会に提出した資料では、この苦情処理手続きの規定ぶりや内容に関する例示や想定はありませんでした。

 

第9条 間接的なサプライヤー;省令制定の権限

(1)第8条の苦情処理手続きは、間接的なサプライヤーにより人権や環境に関するリスクや企業の義務違反が発生している場合にも利用できるように制度設計することを、企業に義務付けています。

(2)企業は下記の(3)に応じて、第4条のリスクマネージメントを適正化するよう義務付けています。

(3)企業が間接的なサプライヤーが起こした問題を明らかにするために、以下の事項を遅滞なく実施することになっています。

1.第5条の(1)から(3)のリスク分析を実行すること。

2.適切な予防措置を確立すること。例えば、管理措置の実行、リスクの予防や回避を補助すること、当該企業の属する産業部門の主導または産業部門全体の主導による実行で、当該企業が参加するもの。

3.(リスクや義務違反を)防止または終了させる、またはその程度を最小限にする計画の策定と実施。

4.場合によっては、第6条(2)の基本方針のアップデート。

(4)労働・社会省は(3)の義務の詳細を、経済・エネルギー省とともに連邦参議院(上院)の承認なしで省令に定めることができるとしています。

 

第9条に関しては、具体的な省令案が公表されたのちに、考察したいと思います。

 

1月1日の記事で紹介した、ダイムラー社の「社会的責任と人権原則」では、15ページに

サプライヤーは、自社の従業員にサプライヤー基準を教育し、その内容をその二次サプライヤーに伝える必要があります。さらに、その二次サプライヤーにも同じ要件を遵守させ、サプライチェーン全体で基準が遵守されていることを確認する義務を負います。

と記載がありますので、ドイツの大企業では間接的なサプライヤーにおける人権等に関する問題の発生を予防する方策は、進んでいるようです。

なお、人権関係ではなく、サプライチェーン全体での脱炭素推進の話ですが、自動車メーカーでは2次取引先以降の二酸化炭素排出量の把握に取り組んでいるという話はこちら。

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